振袖と浴衣の違いは?特徴やその他の着物との違いについても解説

振袖と浴衣はどちらも日本を代表する伝統的な着物ですが、着用シーンやコーディネートには大きな違いがあります。

本記事では振袖と浴衣の違いのほか、それぞれの着用マナーやコーディネートのコツもわかりやすくまとめました。振袖と浴衣の違いについて知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

目次

振袖と浴衣の違いは?

振袖も浴衣も「着物」の一種ですが、着用シーンや作りに大きな違いがあります。

振袖は長い袖が特徴で、未婚女性が着用する格式高い第一礼装。若い女性によく合う華やかなデザインが特徴で、成人式や結婚式などのフォーマルな場面にふさわしい着物です。

一方、浴衣は夏のカジュアルな装いとして祭りや花火大会などで気軽に着用しやすいのが特徴。未婚かどうかにかかわらず、誰でも着用可能です。素材も通気性のよい、カジュアルな薄手の生地で作られています。

振袖とは

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振袖とは、袖丈が長く仕立てられた着物のことです。もともと未婚女性の第一礼装であるとされており、成人式や結婚式のお呼ばれなどお祝いシーンで広く着用されます。袖の長さが長いほど、「格式が高い」とされることも特徴です。

振袖の袖が長い理由は諸説ありますが、一般的には以下の由来が知られています。

振袖の袖が長い理由
  • 「厄を払う」という意味がある
  • 良縁への願いが込められている
  • 若さ・未婚の証

日本では古来より、長い袖を揺らして「厄を払い清める」という風習があり、成人式や結婚式などの大切な節目に袖の長い振袖が選ばれるのは、この厄払いの意味が根底にあるためです。

また、長い袖を「振る」という動作は、異性に思いを伝えることも意味しているとされます。未婚女性の正礼装とされる振袖には「良縁を引き寄せる」という願いも込められているのです。

そして、振袖の長い袖は、若さや未婚の証。二十歳を迎えた新成人の女性が成人式に振袖を着ることは、若さと未来への希望を象徴しているといえます。

浴衣とは

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浴衣は着物と同じ形状でありながら、風通しのよい綿や麻などの素材が使われているのが特徴。夏場のお祭りや花火大会などにぴったりです。

浴衣の語源は、「湯帷子(ゆかたびら)」であるとされ、その歴史は平安時代まで遡ります(※)。風通しのよい素材であることから、湯上がりに着用する衣類として使われておりました。

その後、江戸時代になると庶民の間でも徐々に広く用いられるようになり、明治時代には現在の「浴衣」の形に発展したといいます。

“NPO法人日本ゆかた文化協会 公式HP” 参照

振袖と浴衣の5つの違い

振袖と浴衣の5つの違いについて紹介していきます。以下に早見表もまとめたので、参考にしてみてください。

振袖浴衣
着用シーンフォーマルな場面
(成人式、結婚式など)
カジュアルな場面
(夏祭り、花火大会など)
素材・生地絹などの高級素材綿や麻など通気性のよい素材
コーディネート帯や髪飾りで華やかにシンプルで涼しげなスタイル
着付け方フォーマルな帯結び。専門的な技術が必要通常は帯のみの簡易的な着付けでセルフで着られる
見た目袖が長く、華やかなデザイン袖は短く、涼しげなデザイン

着用シーン

振袖は未婚女性の第一礼装として、成人式や結婚式などのフォーマルなシーンで着用されます。一方、浴衣は夏のカジュアルなシーンで着用されることが多く、お祭りや花火大会のような夏のイベントにぴったりです。

素材・生地

振袖に使われる素材正絹・ポリエステルなど
浴衣に使われる素材絹紅梅、麻、綿絽、綿コーマなど

振袖は絹をはじめとした光沢感のある素材が使われ、見た目も豪華で格式の高さが感じられます。

浴衣は綿や麻などの通気性のよい素材を使用しており、軽やかで涼しいのが特徴。浴衣は暑い夏には特に快適で動きやすく、気軽に着られます。

コーディネート

振袖のコーディネートは、振袖に合わせて帯や帯締め、髪飾りなども華やかな装飾のあるデザインのものを合わせます。

浴衣はシンプルな帯を締め、足元には下駄を履くなど、カジュアルかつ手軽なコーディネートが中心です。

着付け方

振袖は着付けが複雑なため、プロの着付け師に頼むことが一般的。

一方、浴衣の着付けはとても簡単なので、自分で着ることも可能。特に若い方や初心者でも気軽に挑戦できるのが浴衣の魅力です。

見た目

振袖は長い袖と豪華な色柄が特徴で、フォーマルで華やかな印象になります。浴衣はシンプルでカジュアルなデザインが多く、夏にぴったりな涼しげな見た目をしています。

振袖の着用マナー・コーディネート

振袖の着用時のマナーとコーディネートのポイントを押さえておきましょう。振袖で押さえておきたい基本の着用マナーは、以下の通りです。

  • 10-20代がメイン、既婚女性は着用しない
  • TPOにあった色や柄を選ぶ
  • 帯結びもTPOにあわせる

10-20代がメイン、既婚女性は着用しない

振袖を着用するのは、10〜20代の未婚女性がメイン。現代では厳格な決まりは気にされにくくなりつつありますが、「振袖は若い既婚女性が着用するもの」という認識が持たれていることが多いのも事実。

そのため、基本的に既婚女性は着用しないことが多いです。既婚女性の場合や年齢が気になる方は、訪問着を選ぶとよいでしょう。

TPOにあった色や柄を選ぶ

振袖も普段着用している洋服と同様に、TPOにあった色や柄を選びましょう。例えば、二十歳の成人式では自分が主役のハレの日であり、どのような色・デザインの振袖を着ても問題ありません。

一方で結婚式のゲストとして振袖を着用する際は、新郎新婦よりも目立つような装いは避けるのがマナー。少し落ち着いた色の控えめなデザインを選ぶなど、TPOに合わせることを意識しましょう。

帯結びもTPOにあわせる

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振袖の色や柄と同じく、帯結びもTPOにあわせて変えるのが基本のマナー。

特に結婚式に参列者側で振袖を着用する場合、振袖の格に合わせて帯結びは「お太鼓結び」や「文庫結び」などシンプルな結び方を選びましょう。

成人式で着用する場合は、上記を華やかにアレンジした結び方でもかわいらしく着こなせます。

浴衣の着用マナー・コーディネート

浴衣はカジュアルな装いですが、最低限のマナーとコーディネートのコツは押さえておきましょう。押さえたいポイントは以下の通りです。

  • 帯は背中で結ぶ
  • 素足で草履や下駄を履く
  • シンプルで涼しげな髪型で

帯は背中で結ぶ

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女性の場合、浴衣の帯は背中で結ぶのが基本。前で結ぶのは舞妓さんのような特別なケースのみです。

浴衣の帯は幅広いものが多く、結び方によって着こなしの幅も広がります。シンプルなリボンの「文庫結び」や大人らしい雰囲気の「吉弥結び」など、好みに合わせて選んでみてください。

浴衣も他の着物と同様に、左右の重ね方は左前(左側を右側の上に重ねる)が基本。右前に合わせると「死装束」になってしまい縁起が悪いとされるため、注意しましょう。

素足で草履や下駄を履く

浴衣には素足で草履や下駄を合わせるのが一般的です。肌寒い場合や保護目的で「足袋」を履くこともありますが、基本的にはそのまま草履や下駄を履くのが定番のスタイル。

素足がのぞくので、夏らしい涼しげなフットネイルを楽しむのもおすすめです。

シンプルで涼しげな髪型で

浴衣にはシンプルで涼しげな髪型が似合います。アップスタイルやお団子ヘアが定番で、ヘアアクセサリーは浴衣に合わせた色のものを選ぶと統一感が出ておすすめです。

過度に派手なデザインのものは浴衣が負けてしまうため、控えめなアクセサリーを選ぶとよいでしょう。

ほかの和装との違い

振袖と浴衣以外にも和装はたくさんあります。以下に和装の種類と特徴をまとめたので、参考にしてみてください。

スクロールできます
着物の種類特徴着用シーン着れる人
振袖袖丈を長く仕立てた着物成人式・結婚式など未婚女性のみ
※主に10-20代
黒留袖黒地の着物に、裾のみに絵羽模様があしらわれている結婚式・披露宴
(新郎新婦の母親として)
既婚女性のみ
色留袖黒以外の色をした留袖結婚式・披露宴
(ゲストとして)
未婚・既婚を問わず
訪問着模様が着物全体に一続きで入っている結婚式など未婚・既婚問わず
浴衣綿でできた夏用の着物お祭りなど未婚・既婚問わず
フレアーズボンのような形大学の卒業式など未婚・既婚問わず
※主に10-20代
小紋普段使いできる軽い外出着未婚・既婚問わず

TPOにあわせた和装の選び方

和装には着物や生地の種類によって「格」があります。式典や食事会などで同席する相手への配慮にもなるので、TPOに応じて使い分けるようにしましょう。

おおまかには、礼装は冠婚葬祭や式典などのフォーマルシーンで着用します。一方、外出着や普段着などは、自分の好みを生かしてカジュアルに楽しむことが可能です。

着物や生地の種類
第一礼装打掛・黒留袖・五つ紋の色留袖・振袖・喪服など
準礼装色留袖・訪問着・色無地など
外出着付け下げ小紋・小紋・無地の紬など
普段着浴衣・紬・ウール・銘仙・木綿など

振袖や浴衣の着用時にあると便利なアイテム

成人式や夏祭りなど、振袖や浴衣を着るときのイベントは何かと動き回ることが多いもの。メイク直しや着崩れを直す際に、あると便利なアイテムは以下の通りです。

アイテム用途
大きめのクリップや洗濯バサミ(2〜3個)トイレなどで役に立つ
大きめのハンカチ(50cm以上)下を向いたときに化粧で汚れるのを防ぐ
安全ピン・クリップ何かと便利
髪留め・ヘアピン髪が邪魔なときに役立つ・化粧直しのときにも便利
油取り紙・ミニミラー化粧直しに役立つ

まとめ

振袖と浴衣は、どちらも着物の一種ですが、振袖は未婚女性の第一礼装としてフォーマルシーンで着用されるのに対し、浴衣は夏のカジュアルな装いとして親しまれています。

それぞれの違いを知ることで、コーディネートの幅も広がるはず。本記事で紹介したポイントを押さえて、シーンに合った和装スタイルを楽しんでみてください。