振袖とは、袖丈が長く仕立てられた着物のこと。デザインが華やかで、二十歳の成人式での定番スタイルでもあります。本記事では、振袖の基本について、種類や着用シーン、マナーから着付けのコツまで徹底解説します。
振袖とは?
振袖とは、袖丈が長く仕立てられ、長い袂(和服の袖の下の袋状のところ)が付いている着物のことです。もともと未婚女性の第一礼装であるとされており、成人式や結婚式のお呼ばれなどお祝いシーンで広く着用されます。袖の長さが長いほど、「格式が高い」とされることも特徴です。
柄やデザインも豊富で、花や蝶があしらわれた古典柄や、モダンなハート、星柄などを取り入れたデザインなど、さまざまな種類があります。
振袖の歴史と変遷
振袖は古くは江戸時代での着用が確認されており(※)、同時期に一般化したものであるとされています。江戸時代に入ると、若い女性が着る正装の袖丈が徐々に長くなっていきました。
袖丈が長くなっていく背景として、下記が挙げられます。
・異性の気を引き、求婚の申し出に答えるため
・袖を振る踊り子の華麗な姿が流行したため
・袖を振って厄を祓うため意味があるため
当時は主に未婚であることを示すために着用されていた振袖ですが、現代では振袖というと成人式の装いの定番になっています。
※ “e国宝 公式HP” 参照
振袖の種類と着用シーン
振袖には袖の長さによって「大振袖」「中振袖」「小振袖」の3種類に分けられるのも特徴です。袖が長いほど格が高いとされ、「大振袖>中振袖>小振袖」の順で格付けされています。
振袖の種類 | 着用シーン |
---|---|
大振袖 | 振袖の中で最も袖が長く、格式の高い振袖。婚礼衣装として着用される。 |
中振袖 | 袖丈は膝ぐらいまでの長さ。成人式・結婚式などで着用される |
小振袖 | 袖丈は身長の半分程度の長さ。パーティーなどで気軽に着用される |
一般的に振袖というと、成人式や結婚式などで着用する「中振袖」を指すことが多いでしょう。
成人式で振袖を着用する理由
成人式で振袖を着用する理由には以下のようなものがあります。
- 成人の象徴であるため
- 厄払いやお清めの意味がある
成人の象徴であるため
振袖といえば、成人式の定番スタイルです。多くの女性が振袖を着用することから、「成人式には振袖を着たい!」と決めている方も多いでしょう。
成人式で振袖を着ることは、大人への階段を上るという意味があるとされます。振袖は未婚女性の第一礼装なので、実際に成人式にぴったりな衣装であることは間違いありません。
厄払いやお清めの意味がある
振袖の着用には、厄払いやお清めの意味も込められています。厄年に「長い袖で厄を振り払う」という習慣は、現在の成人式における振袖の着用にも通ずるものがあると考えられています。
振袖とほかの着物の違い
振袖とほかの着物の違いは以下の通りです。
振袖は袖の仕立てが長く、袂がついているのが特徴です。袖の長さで見分けやすいですが、着物には振袖のほかにもさまざまな種類があります。
着物の種類 | 特徴 | 着用シーン |
---|---|---|
振袖 | 袖丈を長く仕立てた着物 | 成人式 結婚式など |
留袖 | 格式高い着物 | 親族の結婚式 授賞式など |
訪問着 | 年齢や婚歴に関わらず着用できる準礼装の着物 | 結婚式など |
浴衣 | 綿でできた夏用の着物 | お祭りなど |
袴 | フレアーズボンのような形 | 大学の卒業式など |
小紋 | 普段使いできる | 軽い外出着 |
振袖をレンタル/購入する際の相場
成人式で着る振袖レンタルの相場は20万円〜30万円ほど。安ければ〜5万円、前撮りセットで〜10万円程度でレンタルできる振袖もあります。
購入の場合は素材やデザインによっても大きく異なりますが、おおよそ30万円〜50万円程度が目安です。
振袖の選び方
ここからは、振袖の選び方について紹介していきます。振袖選びのポイントとしては、以下の通りです。
- 色や柄で選ぶ
- 似合うイメージで選ぶ
- 身長と体型に合わせて選ぶ
色や柄で選ぶ
振袖は豊富な色とデザインが魅力です。特に成人式で着用する場合などは、色や柄が自分の好みに合うものを選ぶようにしましょう。
なお、振袖の柄にはそれぞれ意味が込められています。以下も参考にしながら、お気に入りの一着を選んでみてください。
振袖の柄 | 意味 |
---|---|
桜 | 門出を祝う |
牡丹 | 高貴さ・幸せの象徴 |
蝶 | 長寿・成長の象徴 |
鶴 | 長寿・家庭円満の象徴 |
手まり | 平穏・成長の象徴 |
御所車 | 高貴さ・幸せの象徴 |
似合うイメージで選ぶ
せっかく振袖を着るなら、自分にぴったりな一着を選びたいもの。「似合う」を重視するなら、パーソナルカラー診断を活用するのもおすすめです。
パーソナルカラーとは、その人の肌や髪、目の色などの特徴に基づいて、より似合う色を見つけ出す方法のこと。主に「スプリング(春)」「サマー(夏)」「オータム(秋)」「ウィンター(冬)」の4つの季節タイプに分類され、それぞれ似合う色の系統が異なります。簡単な結果を知りたい場合はインターネットでも調べられるので、チェックしてみるとよいでしょう。
身長と体型に合わせて選ぶ
身長と体型に合わせて選ぶのも1つです。身長が高い方であれば、大柄の模様やビビットなカラーも華やかに着こなせます。反対に身長が低めの場合は、小柄な模様や淡いカラーの振袖を選ぶと可愛らしく上品に着こなせるでしょう。
また、体型によっても選び方が変わります。例えば、肩幅が気になる場合は袖の柄で目線を下に誘導するデザイン、ウエストにメリハリをつけたい場合は帯の位置や色使いで調整するなど、工夫次第でなりたいイメージに近づけることができます。
振袖を着る時のマナー
振袖の着用時マナーを押さえておきましょう。振袖で押さえておきたい基本の着用マナーは、以下の通りです。
- 10-20代がメイン、既婚女性は着用しない
- TPOにあった色や柄を選ぶ
- 帯結びもTPOにあわせる
10-20代がメイン、既婚女性は着用しない
振袖を着用するのは、10〜20代の未婚女性がメインです。現代では厳格な決まりは気にされにくくなりつつあるものの、「振袖は若い既婚女性が着用するもの」という認識が持たれていることが多く、基本的に既婚女性は着用しないことが多いです。
既婚女性の場合や年齢が気になる方は、訪問着を選ぶとよいでしょう。
TPOにあった色や柄を選ぶ
振袖も普段着用している洋服と同様に、TPOにあった色や柄を選ぶことが大切です。
例えば、二十歳の成人式では自分が主役であり、どのような色・デザインの振袖を着ても構いません。
一方で結婚式のゲストとして振袖を着用する際は、新郎新婦よりも目立つような装いは避けるべきです。少し落ち着いた色・柄を選ぶなど、TPOに合わせることを意識しましょう。
帯結びもTPOにあわせる
振袖の色や柄同様に、帯結びもTPOにあわせて変えるのがマナーです。
結婚式に参列者側で振袖を着用する場合、振袖の格に合わせて帯結びは「お太鼓結び」や「文庫結び」などシンプルな結び方が基本です。
成人式で着用する場合は、上記を華やかにアレンジした結び方でもかわいらしく着こなせます。
振袖の着付け方、着こなすコツ
振袖を着る際に、きれいに見せる着付けのコツは以下になります。
- 体の凹凸の差を減らす
- 衿合わせの角度で首元をすっきり見せる
- 帯は前下がり後ろ上がりで足長効果を目指す
- 裾すぼまりで下半身を細く見せる
着物は体の凹凸が少ない方が美しく見えます。タオルや綿花、ガーゼなどを使用してウエストとバスト・ヒップの差をなくし、体のラインを筒状に補正するのがポイントです。
また首元を細く長く見せるために、長襦袢の衿合わせの角度を少し鋭角にすることで、首元がすっきりと見えます。後ろの衿も少し多めに開けてうなじを見せると、後ろ姿も美しく見えます。
さらに帯を横から見て前下がりに着付けることで、お尻の位置が高く見え、足が長く見せられる効果があります。なお、万が一着崩れて帯が下がってきてしまった場合は、帯の下にタオルを挟んで解消してみましょう。
最後に腰から下にかけてのラインが徐々に細くなるように、裾をすぼめて着付ければ、全体的にスラっとした印象になり、細身に見せることができます。
振袖のお手入れの方法、保管方法
振袖を長く綺麗な状態で保つためにはお手入れも重要。以下はお手入れやきれいに保管する方法です。
- 着用後の振袖はクリーニングへ出す
- シワがつかないように丁寧に畳む
- 「たとう紙」に包んでタンスなどで保管する
気づかないうちに汚れや汗が付いてしまうため、着用後はクリーニングへ出すのがおすすめ。また、着用から時間が経つと汚れやシミが落ちにくくなり、クリーニング費用も高くなりやすくなります。そのため、できるだけ早くクリーニングに出すようにしましょう。
クリーニングにかかる費用はお店によって異なりますが、丸洗いで1万円〜2万円程度、シミ抜きのみで1,000円〜5,000円程度がおおよその目安となります。長襦袢と帯は振袖と同じようにクリーニングへ出し、小物は自宅でのお手入れが可能です。
クリーニング後はシワがつかないように丁寧に畳み、「たとう紙」に包んでタンスなどで保管するのがおすすめ。また、害虫やカビを防ぐために、保管するタンスには和装用の防虫剤や乾燥材を入れておきましょう。
まとめ
本記事では振袖について解説しました。振袖は長い袖丈と袂が付いているのが特徴で、袖の長さが長いほど「格式が高い」とされています。
現代では成人式の定番スタイルでもあり、豊富なデザインと色柄の中から好みのものを選べることも魅力です。振袖の基本を理解して、結婚式や成人式などでお気に入りの一着を見つけましょう。