振袖の袖の長さについて解説します。振袖は、未婚女性が着用する和装の中でも特に格式の高いとされるものです。その最も大きな特徴である長い袖は、見た目の華やかさはもちろん、さまざまな意味や象徴が込められています。
本記事では振袖の袖丈の由来やサイズの選び方についてわかりやすくまとめました。これから振袖を着る予定のある方はもちろん、振袖について詳しく知りたい方も参考にしてみてください。
振袖とはどんな着物?袖の長さは?
振袖は和服の中でも特に袖丈が長いことで知られ、未婚女性の第一礼装としてフォーマルなシーンで着用されます。
成人式や結婚式といったハレの舞台にぴったりな装いですが、振袖の袖の長さによって3つの種類に分かれ、それぞれに異なる格式や用途があります。
名称 | 袖の長さ | 着用シーン |
---|---|---|
大振袖 (本振袖) | 三尺以上 (約104~120cm) | 花嫁衣裳 |
中振袖 | 二尺五寸尺 (約100cm) | 成人式、結婚式の参列 |
小振袖 (二尺袖) | 二尺 (約85cm) | 外出時、卒業式で袴に合わせて着用 |
大振袖は袖の長さがふくらはぎまであり、最も格式の高い振袖です。主に婚礼衣装として着用されることが多く、豪華なデザインと重厚感が特徴です。
中振袖は袖の長さが膝くらいまでの振袖で、成人式や結婚式のお呼ばれなどで広く着用されます。現代の振袖のスタンダードともいえるこのタイプは自由なデザインでトレンド感のあるものが多く、華やかさと軽やかさを兼ね備えたものが多いです。
小振袖は、身長の半分くらいまでの袖丈が特徴です。卒業式やパーティーなど、よりカジュアルなシーンで着用されます。
このように、袖丈によってさまざまな意味合いや着用ルールがありますが、近年ではその定義も曖昧になってきており、昔よりも自由な発想で選べるようになってきています。
振袖の袖が長い理由
振袖の袖が長いのは、単なるデザインの一部ではありません。そこには日本の伝統や文化、そして願いが込められています。
- 「厄を払う」という意味がある
- 良縁への願いが込められている
- 若さ・未婚の証
それぞれについて見ていきましょう。
「厄を払う」という意味がある
振袖の長い袖には、「厄を払う」という意味が込められています。
日本では古来より、長い袖を揺らして「厄を払い清める」という風習があり、成人式や結婚式などの大切な節目に袖の長い振袖が選ばれるのは、この厄払いの意味が根底にあるためです。
良縁への願いが込められている
長い袖を「振る」という動作は、異性に思いを伝えることも意味しているとされます。未婚女性の正礼装とされる振袖には「良縁を引き寄せる」という願いも込められているのです。
若さ・未婚の証
振袖の長い袖は、若さや未婚の証。二十歳を迎えた新成人の女性が成人式に振袖を着ることは、若さと未来への希望を象徴しているといえます。
このような背景から、現代でも振袖は未婚女性の第一礼装として、大切なハレの日やお祝いの日に着用されているのです。
ベストな袖の長さはどれくらい?
成人式で着る振袖は「中振袖」が一般的。そのため、袖の長さは約95〜100cmが目安となります。
理想の袖丈はふくらはぎ程度までの長さであるとされているので、実際に試着をしてみて選ぶのがおすすめ。ぴったりなサイズを選ぶのなら、着用時に袂の底が床から15cmほどの高さになるのがバランスがよいとされています。
膝よりも下、くるぶしよりも上の長さで着用しなければならないため、あまりにも差がある場合は厚底を履くことや仕立て直しも検討する必要があります。
振袖のサイズ選びで袖丈以外で重要なサイズ
振袖のサイズ調整は着付けで対応できる範囲もありますが、場合によっては仕立て直しが必要となることもあります。振袖のサイズ選びでは、袖丈以外にも「身丈」「裄丈」「身幅」に注意して選びましょう。
種類 | 定義 | 適切な長さ | 着付けで調整できる範囲 |
---|---|---|---|
身丈 | 肩から裾〜おはしょりの長さ | 身長+5cm | ー5〜+20cm |
裄丈 | うなじから手首のくるぶしの中心までの長さ | 実測値 | ±2cm |
身幅 | 後幅+前幅+衽幅の長さ | ヒップ+5cm | ±5〜10cm |
身丈
振袖の身丈は、肩から裾までの長さに、おはしょりの分を加えた長さになります。
おはしょりとは、着物の腰回りに作る余った部分のことです。身丈は基本的に身長+5cmが目安とされており、ー5〜+20cm程度の誤差であれば着付けでカバーできます。
しかし、身丈が大幅に違うと、見た目のバランスが崩れ、立ち姿の美しさが損なわれるため注意しましょう。
裄丈
裄丈は、腕の長さのことです。直立した状態で利き腕を水平にのばし、うなじの中心から肩先を通り、手首のくるぶしまでの距離が裄丈になります。
裄丈が合わないと袖の長さが不自然になり、動きにくくなったり、どことなくちぐはぐな印象になったりしてしまいます。裄丈は一般的に±2cm程度の誤差であれば、着付けで調整可能です。
身幅
身幅は後幅、前幅、衽幅(おくみはば)の3つの寸法の合計値で、左袖のつけ根から右袖のつけ根までの距離のことです。一般的に、ヒップ+5cm程度が目安となります。
振袖の身幅が合っていないとシワやたるみが生じ、綺麗に着こなすことが難しくなります。サイズが合っているかどうかは、着物を着用した際に、背中心をしっかり合わせた状態で、自然に腕を下ろした際に脇線が適切な位置にあるか確認しましょう。
身幅に関しては、±5〜10cm程度までなら着付けで調整できます。
自分にあったサイズの振袖を選ぶコツ
振袖のサイズを選ぶ際には、以下のポイントに気をつけてみてください。
- 袖丈は膝より下・くるぶしより上が目安
- レンタル・購入を問わず必ず試着する
袖丈は膝より下・くるぶしより上が目安
袖丈は、振袖の中でも特に見た目に響く部分です。一般的に、袖丈が膝より下で、くるぶしより少し上に来る長さが美しいとされています。
袖丈が短すぎたり長すぎたりすると全身のバランスが崩れてしまうため、試着の際には慎重に確認するようにしましょう。
レンタル・購入を問わず必ず試着する
レンタル・購入にかかわらず、必ず試着するようにしましょう。特に袖丈は規定のサイズ「1m」を基準に、自分の体型とのバランスも見ながらどのようにフィットするのかを実際に確認することが重要です。
実際の着姿のバランスを確かめつつ、少しでも気になる点があればその場で相談することをおすすめします。
袖が長すぎる・短すぎる場合のデメリット
袖が長すぎる・短すぎる場合のデメリットは以下の通りです。
袖が長すぎる場合のデメリット | 袖が短すぎる場合のデメリット |
---|---|
・袖が床について汚れる ・重たく見えてしまう ・動きにくい | ・振袖の格が下がる ・華やかさがダウン ・寸足らずな印象になる |
袖が長すぎると動きにくいだけでなく、歩く際に袖が床に触れてしまい、汚れやすくなります。また、見た目のバランスが崩れて重たい印象を与えてしまうことも。
反対に短すぎる場合は振袖本来の格や格式が下がって見えて、振袖ならではの華やかさがダウンしてしまいます。また、全体的に寸足らずな印象を与えてしまうこともあるため、注意が必要です。
袖の長さがあわない場合の対処法
袖が長すぎる場合、多少の差であれば厚底の草履を履くことで対処できます。草履で身長を5~10cm程度プラスできれば、袖丈が長い振袖でもバランスを取れるでしょう。
一方で、袖が短すぎる場合、袖を中に折り込んで仕立てている場合は仕立て直しできますが、袖を切ってしまっていると難しい場合があります。
袖を中に折り込んでいるものを仕立て直す場合、強いスジができていたり、ヤケている可能性が高く、スジ消しやヤケ直しといった作業が必要になります。
袖を切ってしまっていると、仕立て直すのが難しく着用できないケースもあるため、振袖を選ぶ際には、袖丈に十分注意しましょう。
まとめ
振袖を選ぶ際には、袖の長さが重要なポイントです。袖が長すぎると重たく見え、袖が短すぎると振袖の華やかさがダウンしてしまうので、「膝より下、くるぶしより上」の位置に来るものを選ぶようにしてみてください。自分の体型にぴったりな振袖を選んで、気持ちよく当日を迎えましょう。