成人式や卒業式など、人生の節目に着る機会が多い振袖。思い入れのある大切な一着だからこそ、結婚後の扱いに悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「結婚したら振袖は着てはいけない?」「思い出の振袖を活用するには?」といった疑問にお答えします。結婚後の活かし方やリメイク方法も紹介するので、結婚後の振袖の扱いに迷っている方は参考にしてください。
振袖を結婚したら着られなくなる理由

振袖は「未婚女性の第一礼装」として定められた格式ある衣装。そのため、結婚後は正装として着る機会が自然と少なくなります。
振袖は未婚女性の第一礼装であるため
かつて日本では「袖を振ること」が恋心や求婚のサインとされていた時代がありました。道ですれ違う際、意中の相手にそっと袖を振る仕草が、言葉にできない想いを伝える手段でした。
そのような背景もあり今もなお、振袖は結婚する前の未婚女性が着る服として認識されています。
結婚後の正礼装は「訪問着」や「留袖」
既婚女性の場合、正礼装は「黒留袖」「色留袖」「訪問着」などを着用するのが一般的。結婚後の正式な場にふさわしい装いとされています。
また、これらの着物は落ち着いたデザインのものも多いですが、振袖は20代前半のような若い人向けデザインが特徴。マナーの観点を除いても、自然と着用の機会も減ってくるでしょう。
結婚していても振袖を着用できるケース

- 成人式
- 卒業式
- 結婚式での花嫁衣装
成人式
成人式では中振袖を着用することが一般的です。既婚者であっても、人生の節目を祝うハレの日の衣装として着用して問題ありません。華やかな色や柄を選び、人生で一度きりの成人式を特別な姿で迎えましょう。
卒業式
卒業式では、小振袖と袴を組み合わせて着用することが多いです。こちらも既婚者であっても、ハレの日の衣装として着用することは問題ありません。
結婚式での花嫁衣装
花嫁の場合、白無垢、打掛、引き振袖の3種類から選びます。成人式の振袖が中振袖であるのに対し、結婚式ではもっとも格の高い大振袖を着用することが多いのが特徴。披露宴のお色直しとして振袖を着用するのもおすすめです。
結婚後の振袖の活用方法
使わなくなった振袖はさまざまな活かし方がありますが、大きく分けて以下の4つに分類できます。それぞれの方法に必要な費用や注意点を理解した上で、自分に合った方法を選びましょう。
活かし方 | 方法 | 注意点 | 費用相場 |
---|---|---|---|
「ママ振り」として受け継ぐ | 子どもや孫に受け継ぐ、代々の思い出を大切に。 | サイズ調整や保管状態に注意が必要。専門の仕立て屋に依頼するとよい。 | 保管・メンテナンスにかかる費用のみ(仕立て直しが必要な場合も) |
訪問着に仕立て直す | 振袖を改良して、年齢を問わず使える訪問着に変える。 | デザインによってリメイクできない場合も。 | 1万円〜 |
ドレスなど洋服に仕立て直す | ドレスやワンピースにリメイクしておしゃれ着に。 | 仕立て直しに時間と費用がかかる。 | 5万円〜20万円 |
小物にリメイクする | ポーチやバッグ、アクセサリーにリメイクして日常使いに変える。 | リメイク後は元に戻せなくなる。 | 千円〜 |
着物として受け継いでいくなら、ママ振りとして使用するか訪問着に仕立て直すとよいでしょう。洋服や小物で日常シーンで使いたいなら、ドレスや小物へのリメイクがおすすめです。
「ママ振り」として次世代に受け継ぐ
成人式ではサイズに合った振袖を着用することが重要なため、子どもの体型に合わせて調整が必要です。お母さんと子どもの体型に差がある場合は、専門の仕立て屋に袖の長さや着丈の調整を依頼しましょう。
また、期間保管していた振袖は湿気や虫食い色褪せが生じている場合もあります。次に着るときに美しい状態で着られるよう、クリーニング後は湿気の少ない場所で保管することが大切です。
振袖を長期間保管する前には、必ず専門のクリーニングに出しましょう。特にシミや汚れがないかチェックし、しっかりとケアしておくことが大切です。
訪問着に仕立て直す
振袖を訪問着にリメイクする方法も人気です。振袖の袖を切り、年齢を問わず着用できる訪問着に仕立て直すことで、式典やパーティー、冠婚葬祭に着用できる一着として愛用し続けられます。
注意点としては、柄やデザインによっては訪問着としては着用できない場合もあるということ。訪問着にリメイク可能な振袖の特徴は以下の通りです。
- 袖の柄が途切れないデザイン
- 柄と柄の間を広く取った「飛び柄」
- 色・柄が控えめなデザイン
訪問着への仕立て直しは、5万円程度から可能です。詳しくは以下の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

ドレスや洋服に仕立て直す
振袖をドレスなどの洋服にリメイクする方法もあり、ワンピースやドレス、ウェディングドレスなど、さまざまな形にリメイクできます。
相場は5万〜20万円が目安の価格帯ですが、ウェディングドレスなど、より手の込んだものは30万円以上かかるものも。
注意点としては、仕立て直しに時間がかかりやすいこと。特定のパーティやイベントなどで着用する予定がある場合は、スケジュールも踏まえて仕立て屋さんに相談してみましょう。
小物にリメイクする

振袖を小物にリメイクする方法も、日常生活で使いやすくおすすめ。小物としてリメイクすれば振袖の生地を無駄にせず、実用的に活用できます。
費用は内容によってまちまちですが、3万円程度からが相場となります。
独身なら離婚歴があっても着用できる?
離婚歴があるから振袖を着られない、といったルールは特にありません。
ただし、結婚歴を知っている人が多い場所では、周囲に気を使わせてしまったり、自分自身が居心地の悪さを感じたりする可能性があります。
振袖にこだわりがなければ、留袖や訪問着などの他の和装スタイルを選ぶのも一つです。
振袖は何歳まで着用できる?
振袖に明確な年齢制限はなく、未婚女性であれば何歳でも着用が可能です。しかし、実際には年齢によって選ばれる傾向や、周囲からの印象に違いが出てくるため注意しましょう。
未婚女性であれば、厳密な年齢制限はない
振袖は未婚女性の第一礼装です。未婚女性である限りは、「着用できるのは何歳まで」といった厳密な年齢制限は設けられていません。
一方で既婚女性は「黒留袖」または「五つ紋の色留袖」が第一礼装となり、振袖を着る機会はなくなります。
30代以上の女性が着用することは稀
振袖を着用するのに年齢制限はありません。しかし、世間一般的な考え方や周りからのイメージを考慮して、30代以降になると未婚女性でも着用する方は少ないのが実情です。
また、振袖のデザインは主に20代前半の若い層に向けて作られているものが多く、30代以上の方には少しアンバランスに感じられることもあります。どうしても振袖を着用したい場合は、控えめな色やデザインを選ぶことで、年相応に着用することも可能です。
30代以上の方が和装を着用する際は、未婚・既婚を問わず着用できる訪問着や色留袖(五つ紋以外)がおすすめです。

結婚後、振袖以外で着用できる和装は?

結婚後は振袖に代わって、既婚女性にふさわしい格式を持つ和装が選ばれるようになります。ここでは、代表的な2つの着物について紹介します。
- 訪問着
- 留袖
訪問着
訪問着は、模様が着物全体に一続きになるように入っているのが特徴で、振袖と同様にフォーマルなシーンで着用される着物です。
振袖とは違い、婚歴や年齢に関わらず着用できます。
留袖
袖が長いものを振袖、袖が短く裾周りだけに柄が入っているものを留袖といいます。振袖が未婚女性の第一礼装とされてるのに対し、留袖は既婚女性の正装とされています。主に結婚式で母親や親族などが着用します。
なお、留袖の中でも特に、黒色の「黒留袖」と五つ紋の「色留袖」が第一礼装でもっとも格式高いとされています。それ以外の「色留袖」は準礼装になりますが、現代ではそこまでは厳格に気にされないことも多いです。
振袖・結婚に関するよくある質問
最後に、振袖・結婚に関するよくある質問をまとめました。
Q. 振袖は結婚すると着れなくなる?
振袖は未婚女性の第一礼装とされているため、結婚後は基本的に着用しません。既婚女性の場合は、訪問着や留袖が正式な装いとされます。
Q. 振袖は結婚後どうする?
思い出の詰まった振袖は、「ママ振り」として子どもに受け継いだり、訪問着や洋服、小物にリメイクする方法があります。保管しておくことはもちろん、新たな形にして活用するのもおすすめです。
Q. 振袖は結婚後留袖に変わる?
黒引き振袖など一部の婚礼用着物は黒留袖へのリメイクが可能です。通常の振袖は、袖を詰めて訪問着に仕立て直すことが一般的です。

Q. 色無地は既婚者でも着られる?
色無地は既婚・未婚問わず着用できる便利な着物です。紋の数や合わせ方によってフォーマルにもカジュアルにも対応できるため、結婚後も様々なシーンで活躍します。
まとめ
成人式や卒業式、花嫁衣装として着るケースなどの例外はあるものの、結婚すると振袖の着用機会はなくなります。
結婚後は、訪問着への仕立て直しや洋服・小物へのリメイク、「ママ振り」として受け継ぐといった活用がおすすめ。ただし、それぞれ費用や手間がかかるため、自分に合った方法を選びましょう。